2016年11月号

『意味は後から』


私たちは乱れた道衣を直すときに立ち上がり、帯を結び直しながら、酸素を求めて喘ぎながら、壁に何百と並ぶ先輩たちの名札を見上げて助けを求めた。同じ道場で同じ苦しみの日々をくぐり抜けて卒業していった先輩たちに、この苦しみの日々の意味を求めた。みな答を見つけて卒業していったはずなのだ。だったらその答を、いま教えてください。


 

今年の夏に出会った小説『七帝柔道記(ななていじゅうどうき)』(著者:増田俊也 角川書店)の一節です。七帝とは旧帝国大学(東大、京大、阪大、九大、名大、東北大、北大)のことで、それらの大学の柔道部が毎年開催する定期戦を『七帝戦』と言います。オリンピックなどで行われる柔道とはルールが大きく異なり、戦いの中で寝技の比重が高くなります。体重無差別!で15人の勝ち抜き方式で行われます。今でも毎年行われています。小説では弱体化した北大(北海道大学)の柔道部に入部した著者が、同期の仲間や先輩他周囲の人と格闘し、奮闘し、苦闘し、葛藤していく姿が描かれています。

 

北大柔道部には一つのポリシーがあります。

 

「寝技を強くするのは練習量!」

 

立技は、身体の大きさや持って生まれた運動能力、それまでの柔道歴が大きく影響し、大学4年間で強い選手に追いつくのはかなり難しいもの、一方、寝技は素人で入部したとしても、練習次第で強くなれる!身体が小さくても大きな選手とやりあえる、どんな強い選手とも寝技であれば引き分けに持っていける、そんな信念が北大柔道部に根付いており、それゆえ限界近くに及ぶ練習が行われ、文頭のような精神状況に学生たちは追い込まれていきます。

 

どれだけ過酷な練習なのか?ご興味を持たれた方はぜひご一読を。と言って夏以降何人かの人に薦めて見たのですが、実際に読んだとの声は聞こえず……。確かに愛だの恋だのもまったく無いですし、ギャグもありません(異常な世界を描いた結果面白い!!になっている部分も多々ありますが)。

 

現実世界でも今置かれている物事や状況に意味を見いだせない。実はよくあることだと思います。子どもたちは、勉強に対してよくこんな言葉を発します。「英語なんて将来使わないし」とか「“X”って実生活と関係ないし」と。大人も子どもの頃多かれ少なかれ考えたことでしょう。でも大人になると、子どもに「勉強した方がいい」と言います。もちろん受験のためという意味も大きいのでしょうが、昔、意味を見いだせなかったことが今思えば結構大切なことだと思えるようになったということも、子どもに語る要因の一つだと思います。“X”は日常生活では使わないけど、全く無意味なことではない、そう思えていませんか。僕は昔大嫌い!だった化学が今面白い。「うわ~、『電子』が、『中性子』が、僕の目にもパソコンにも存在してるんだ!」って感動します。「人間は『二酸化炭素』はたくさん吐き出すけど、もし『一酸化炭素』だったら……大変なことに!」と空想して楽しんでいます。

今目の前に起きていることの意味を見いだせなくとも、後に「あ~そう言うことか!!」となる時が来るのだと思います。意味を追い求め(過ぎ)ず、意味に囚われ(過ぎ)ず、ただひたむきに一所懸命に目の前のことに取り組む、ひたむきな分一所懸命な分、後で実感できることの意味も味わい深いものになってくるはずです。                             

                                     

                                           奥松

 

捉え方を変える

 

 

 

突然ですが、皆さんは世界地図をご覧になったことがありますか?果たしてその世界地図の大陸や島の大きさは、正しい大きさになっているのでしょうか?今年のグッドデザイン大賞に、新しい世界地図図法「オーサグラフ世界地図」が選ばれたのですが、流石デザイン賞を受賞しただけあって見た目が整っています。私は一目惚れしました!それでいて、大陸や島の大きさの歪みはほとんどないそうです。一見すると大陸や島の位置に違和感を覚えますが、普段見慣れている「メルカトル図法」の方がかなり歪んでいます。と、何だかタモリさんみたいなマニアックな話になってしまいましたが、何が言いたいかというと、見方を変えると、その捉え方も変わってくるのではないかと、この新しい世界地図を見て改めて実感したといいうことです。

 

なんかありきたりなことを言っていますが、大人になると、与えられた情報や、固定観念にとらわれすぎているように思えます。でも、レゴ教室で子供たちと接していると、いろんな角度から、彼ら彼女らは攻めてきます。中には突拍子もない発想が出てきて、思わず笑っちゃうんですけど、私はなるべく、大人の捉え方を捨てようと繰り返し自分の心に言い聞かせています。彼らの何気ない一言、動作を固定観念で決めつけるのではなく、本当にバカバカしい事なのか?とか、何か意味があるのではないか?とか、一度立ち止まって、違った捉え方ができないか考えてみたり、常識とは違うものについて、深く考えてみたりすることが大事なような気がします。

 

  インストラクター 伊勢 豊

 

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