2023年7月号

☆グループ教室 学習塾“稲進会”の内容も含まれます。

『挑戦は連鎖する

(先月号の続き)人類の進化は挑戦の連鎖によるということに関して。

人類の進化に大きくつながったと言われているものの一つが“火”の使用です。人類は、火を自在に活用することで様々な進化を実現してきました。火と言えば、灯り、暖房、猛獣対策など、そして料理に使えるのは大きいですね。火で加熱することで肉が柔らかくなる、すると人類の歯は小さくなり、さらに消化しやすくなることで胃腸も小さくて済むようになった。結果、消化に費やすエネルギーが少なくなった分、脳にエネルギーを回せるようになり脳の容量の拡大につながったそうです。また、火を囲んで食事やらちょっと一杯を行うことで人類のコミュニケーション能力も大きく進歩したそうです。

 

火は人類の進化に大きくつながっているとして、最初に火を使用してみようと思ったのはどのような人だったのでしょう。初めて火を目にした時、そして触れた時、どのように思い反応するのか。大昔、火山から流れ出た溶岩や落雷によって火は自然現象として人類の前に発生していたそうです。火に近づいたとき感じるのは、とてつもない熱さ、そして一気に燃え広がっていく姿を見てこんな恐ろしいものは無いと思ったことでしょう。ある時、一人の人間が火と向き合います。周囲の人間が恐れおののく中、目の前の火に狩りでとってきたばかりの生肉を入れてみた、するとなんともいい感じで焼けていくではないか、そして口にいれるとジューシーな肉になっていてとても美味しい。あるいは、枯れ木についた火の加減を調整しようとしてみた、住み家に火を持ち帰り暖をとれるようにしたなど、恐れる存在であった火を自分の支配下に置こうとした人がいたはずです。火への挑戦の連鎖が火を自在に操ることを可能にし、人類の進化へとつながりました。

 

その他、挑戦の連鎖がわかりやすいのはスポーツの世界になるでしょうか。さかのぼること60年前、東京オリンピックのマラソンで金メダルをとった選手の記録は2時間12分(アベベ・ビキラ選手)でした。現在の世界記録は2時間1分(エリウド・キプチョゲ選手)、このキプチョゲ選手は非公認のレースではあるものの2時間切りも達成しています。60年かけて11分の記録更新、マラソンで気づいたら2時間1分で走っていた!なんてことはあるはずもなく、1キロ単位でのペース配分を意識して(トップ選手は恐らくもっと細かく考えていることでしょう)走った結果のはずです。つまり記録の更新を狙って挑戦しているからこそ新たな記録が生まれる、そして記録が更新されていくのは、誰かが2時間11分で走れたなら自分もその記録を越えられるはず!次は2時間10分を!といった連鎖の積み重ねによるのでしょう。

 

ただ、挑戦の連鎖には進化や記録の更新といったものの他にも大きな意味があるのかなと。単純に誰かが何かに挑戦する姿はかっこいい!ですよね。そうした姿を見て自分もこれまでやってこなかったことに挑んで見よう!と思うのも人間の一つの特性である気がします。そして振り返った時に、結果うんぬんに関係なく挑んだ過程に価値を見出せるのも人間ならではのことのように思えます。(奥松)


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