２０２３年５月号

☆グループ教室　学習塾“稲進会”の内容も含まれます。

『什（じゅう）の掟』

記憶力は、年齢とともに低下していく、よく言われることですね。このことは、確かに否定できないことだと日常生活の中で思い当たることが増えていっております。映画やドラマをみていて、“この人（出演者）の本名なんだっけ？”のループには気をつけないといけません。あの映画、あのドラマ、あのコマーシャルに出ていたことは思い出せても、本名だけは思い出せない…、ア行から順番にたどって言っても思い出せない。こうなると映画やドラマの内容は、ほとんど頭に入ってきません。仮に最初に気になった人の名前を思い出せたとしても、また一人思い出せない人が登場し……、となるので危険です。

ただ、年齢とともに記憶力が低下していくことは、人間がストレスなく生き続けていく上で必要な力でもあるようです。仮に、あらゆる経験を全て記憶しているとしたらどうでしょう？

　オーストラリアに住む、レベッカ・シャーロックという女性は、生後12日目から現在までのほとんどすべてのことを記憶しているそうです。彼女は、自伝的超記憶という能力を持っていて、小説『ハリーポッター』全巻を一字一句正確に覚えているとのこと。受験生にとっては、うらやましい限りの能力ですね。ただ、嫌な経験、苦い体験、あんなことしなければとか言わなければと言ったこともすべてはっきりと覚えていることになります。そうした経験を思い出した日は、一日中、暗い気持ちになることもあるようです。

　思い出したくない出来事を全て覚えていたとしたら、もちろん良い思い出も全て覚えていることになるので、プラスとマイナスが同じだからいいんじゃない、とはならないですよね。生きて行く上で良い思い出と呼べるような出来事は、それほど頻繁には起きません。ちょっとイラっとするけどその場は我慢我慢で、時間が経つと忘れている、そんな感じで人間の心の平静は保たれていることがほとんどだと思います。つまり、忘れることで人間は自分の精神状態を保っていられるとも言えるのでしょう。年齢を重ねれば、それだけ経験する量も多くなります。その分忘れてしまわなければならないことも増える、だから生きて行くために記憶力をわざと低下させているのかもしれないですね。

　とはいえ、脳の力は出来るだけ維持したいものでもあります。記憶力も含め脳の老化を防ぐには、日々の刺激が重要で、十分な睡眠とともに、新たなことにチャレンジしたり、旅行で非日常を体験したりなど、そして夜に納豆と卵かけご飯が効果的だという情報も。

　それにしても、ポケモン好きの子供たちの記憶力はスゴイ。時折教室に持ってきて見せてくれる六法全書ほどの図鑑にずらっと掲載されたポケモンキャラクター、それらの名前をスラスラと！

自分は、ようやく片手ほど名前を言えるようになりました。（奥松）　　

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